「少女地獄」夢野久作
「少女地獄」夢野久作 角川文庫

夢野久作の短編集です。

表題作「少女地獄」と「童貞」「けむりを吐かぬ煙突」「女坑主」の4篇で構成されていますが、やはり一番よくできているのは「少女地獄」かな。
「少女地獄」は書簡体の「何でも無い」「殺人リレー」「火星の女」のオムニバスです。
自ら地獄を選び、苦しみもがく少女達。

「何でも無い」で描かれるのは、誰にでも好かれる天才的看護師、姫草ユリ子の病的な虚言癖から生み出される無限のうそ地獄。
私は最初の方で「人間失格」を思い出しましたが、ラストも違うし、ユリ子のことを第三者が語るという点が異なっていますね…心理としては本質的には同じなのかな。どろどろしてるし。
嘘をつき、その嘘を隠すためにまた嘘をついて、次第に追い詰められていくユリ子が気の毒で、そしてたまらなく魅力的でした。
ユリ子のつく嘘は相手を騙すためというよりは自分を守るためのように感じられたので。
彼女にとってはうその地獄ではなく、楽園だったんでしょうね。
そして思ったのが、この書簡自体が彼女の創作で、姫草ユリ子自身も存在しないのではということ。
よく考えると、名前が妙に安易なんですよね。臼杵医師なんて特に。
わざと適当に夢想して付けたような名前にしたのか。
…深読みしすぎ?

「殺人リレー」のテーマは新高なる人物の魅力と彼に誘惑される女性。
これが一番読みやすかったです。
というか●●後のトミ子の心理が恐ろしすぎます!
女性の情念の強さが印象的。

「火星の女」は少女地獄のなかで、唯一少女らしい年齢の少女が主役となっている話。とはいえその少女がいきなり黒焦げになって登場します…
最初に事件の結末を新聞記事形式で示していて、書き方がホントに新聞。さすが新聞記者!
火星の女、甘川歌枝の高身長、醜い顔ゆえの悩み、苦しみが執拗に表現されてます。
3篇のなかでもっともセンセーショナル、そしてドラマティック。
でも、ちょっと単純だったし、いまひとつ好きになれない…

あとの3作もとてもエロティックかつ不思議な魅力に溢れていて良作でした。
「ドグラ・マグラ」と同じく、米倉斉加年氏の手がける表紙も素敵です。

「ドグラ・マグラ」よりもとっつきやすいので、しり込みしている方にもおすすめします。
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【2007/03/14 23:15 】 | | コメント(0) | トラックバック(0) |
暗いところで待ち合わせ
「暗いところで待ち合わせ」乙一
映画化もされているので、知っている方も多いやも。

設定のおもしろさに惹かれて、図書館から借りてきたのですが、
予約が7人待ちでびっくり。(別の図書館から借りました)

「警察に追われている男性が、目の見えない女性の家に忍び込んで、住み着いてしまう」というのがおおまかなあらすじです。

目が見えないために、外に出るのを恐れ、引きこもってしまうミチル。
職場でうまく人間関係をこなせなかったアキヒロ。
それぞれの目線で話が進んでいきます。
二人は不器用に奇妙に触れ合っていくのですが、
その不器用っぷりが心が温まります。

感動ものとしてはとても良い出来。
でも私はこれをミステリーだと認めるのはイヤです。
妙に推理(でもないか)絡めようとしない方が良かった。

乙一の作品は「グロテスク系」「感動系」に二分されるのですが、これは明らかに感動系。
というわけで、表紙がちょっと間違えてる気がします…


しかし個人的に登場人物の死を感動に持っていく話って好きじゃないなぁ…
なんか不毛だと思います。
これは違うのでいいんだけども。

文体は軽めで、とても読みやすいので、普段あまり本を読まない人にもオススメです。
 
*ネタばれ以下反転*

アキヒロは結局殺人を犯してないわけですが、犯してた方が話としては面白くなったのではないか、と思ってしまうのですよ。
この結末だと、なんだかすごくご都合主義というか、甘い気がします。
まだ高校生でしかない私が言うのもなんですが、乙一って他の作品においても甘いような。

母いわく、どうせ食事を一緒にするんだったら、後片付けくらいしろ!
と怒ってたのですが(笑)それももっともかもです。


暗いところで待ち合わせ 暗いところで待ち合わせ
乙一 (2002/04)
幻冬舎

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【2007/02/10 21:35 】 | | コメント(0) | トラックバック(0) |
本読むでー 夜市
最近本たくさん読んでます。
「野ブタ…」から果ては「十八史略」まで節操がない読みっぷりです

これって活字中毒?

まぁいいや。

せっかくなので、ちょっとレビュします


恒川 光太郎「夜市」
出版社 / 著者からの内容紹介
選考委員激賞の、第12回日本ホラー小説大賞受賞作
何でも売っている不思議な市場「夜市」。幼いころ夜市に迷い込んだ祐司は、弟と引き換えに「野球選手の才能」を手に入れた。野球部のエースとして成長した祐司だったが、常に罪悪感にさいなまれていた。

…というようなあらすじの表題作である「夜市」と「風の古道」の2作品を収録した本です。

まず夜市なのですが、
「え、これホラーなの?」というのが初読時の感想。
怪談とかが怖いのは、そのできごとが自分にも起きるような気がしたりするからだと思うのですが、そういう意味での怖さはほとんどありません。
というか、ない。
これはホラーではなく、むしろファンタジーではないかな。
西洋的ファンタジーではなく、日本の民話のような、これは乱暴な例えのような気もするけど、「蟲師」と似た読後感でした。
後半の劇的な展開は読めなかった。
内容は濃いですが、サクサク読めました。

風の古道も似たような雰囲気。
こちらはより冒険的な要素が加わって、夜市ほどの余韻は残さないのですが、どこか楽しそうな話でした。

全体的に不思議で面白かったです。
もっかい読も。

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【2006/03/25 20:57 】 | | コメント(0) | トラックバック(0) |
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